おできとは?毛嚢炎・せつ・ようの違い
おできという言葉には明確な定義がなく、一般的に皮膚が赤く腫れていて、ときに痛みをともなう症状のことを"おでき"と呼ぶことが多いです。
この記事では一般的におできと呼ばれる「毛嚢炎(もうのうえん)、癤(せつ)、癰(よう)」の3つの皮膚疾患を中心に解説します。
毛嚢炎・せつ・ようの違い
毛嚢炎は、皮膚に黄色ブドウ球菌などが感染することにより起こる皮膚疾患で、毛の根元が小さな赤いまたは白い吹き出物のようになります。
せつは、毛嚢炎が進行して毛穴のより深くにまで症状が進行したもので、1個の毛包(毛穴の奥)と周囲の皮膚に炎症が生じ、化膿した状態のことを指します。
ようは、せつが複数の毛包で発生する症状で、表面に白い膿(うみ)を持った毛穴が多数現れるのが特徴です。
まとめると、毛嚢炎が進行したものがせつ、せつが進行して複数の「せつ」が毛穴の下で繋がったものが「よう」です。
ニキビとおできの違い
ニキビは毛穴に皮脂汚れが詰まり、炎症を生じることで起こる皮膚疾患です。
細菌が原因であることは毛嚢炎・せつ・ようと同じですが、ニキビの原因菌はアクネ菌、毛嚢炎・せつ・ようの原因菌は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などという点で異なります。
見た目で見分けるのは難しいですが、ニキビだと思っていたできものが急に硬くなったり、腫れ上がってきたら要注意です。数日様子を見ていても症状が改善する様子もなく、痛みが続く場合には、おできの可能性もあります。
ニキビに使える市販薬について、詳しくは次の記事で解説しています。
粉瘤(ふんりゅう)とおできの違い
粉瘤とは、皮膚の下に袋状のできものが生じ、垢や皮脂が袋の中に溜まってしまうことで発生する皮膚腫瘍です。
身体のどこにでも起こり得ますが、顔・背中・首・耳の後ろにできやすい傾向があります。
粉瘤は通常は痛みや赤みはありませんが、粉瘤のできた皮膚に細菌が入り込むと炎症性粉瘤と呼ぶ皮膚疾患に進行します。
毛嚢炎・せつ・ようとは異なり、触るとしこりがあることが特徴です。
おできに使える市販薬の選び方|毛嚢炎や面疔など
おできの症状が表面的で軽度のもの(毛嚢炎程度)であれば、抗生物質や抗菌剤を配合した市販薬を選ぶのがおすすめです。代表的な市販薬でいえば、オデキュアEX、クロマイ-N軟膏などがあります。
顔におでき(毛嚢炎)ができているものを面疔(めんちょう)といい、面疔の場合も、オデキュアEX、クロマイ-N軟膏などが使用できます。
症状がせつやようまで進行している状態であれば、抗生物質や抗菌剤を配合しているだけでなく、効能効果に「せつ」「よう」と記載のある薬を選ぶのが良いでしょう。主な市販薬には、ドルマイシン軟膏があります。
市販薬に含まれる抗生物質・抗菌剤の成分例 |
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スルファジアジン、クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩、コリスチン硫酸塩(硫酸コリマイシン)、バシトラシン など |
おでき(毛嚢炎や面疔など)に使える市販薬|ステロイド無配合
おできの症状に使える市販薬を5種類紹介します。
市販薬は、配合されている成分によって適した症状が異なるため、おできの状態に合わせてお選びください。
オデキュアEX
特徴 |
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毛穴に侵入・繁殖した雑菌をおさえる抗菌剤スルファジアジンと、腫れを鎮めるジフェンヒドラミンサリチル酸塩を配合した薬です。
膿を出して、腫れを鎮めることで、痛いおできを改善します。ノンステロイドのため、股や太ももなどのデリケートゾーンにも使用できます。
■効能効果
化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日数回、適量を患部に塗布するか、またはガーゼ等に延ばして貼ってください。 |
■有効成分
スルファジアジン、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩 |
クロマイ-N軟膏
特徴 |
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細菌の発育や増殖をおさえる抗生物質としてクロラムフェニコールとフラジオマイシン硫酸塩を、抗真菌成分としてナイスタチンを配合した化膿性皮膚疾患の薬です。
首・デコルテ・背中・デリケートゾーンなどの部位にも使用できます。
■効能効果
化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日1〜数回、適量を患部に塗布してください。 |
■有効成分
クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩、ナイスタチン |
ドルマイシン軟膏
特徴 |
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膿んだおできだけでなく、傷・やけどの化膿予防にも |
コリスチン硫酸塩(硫酸コリマイシン)とバシトラシンの2種類の抗生物質を配合した化膿性皮膚疾患の薬です。幅広い種類の菌に対して効果を発揮するのが特徴です。
せつやようといった症状だけでなく、傷ややけどによる化膿や二次感染の予防にも使用できます。
ノンステロイドのため、股や太ももなどのデリケートゾーンにも使用できます。
■効能効果
外傷・火傷等の化膿予防及び治療、膿痂疹(とびひ)、セツ(せつ)、癰(よう)、疔(ちょう)、毛ノウ炎、湿疹、グラム陽性・陰性菌の単独及び混合感染による皮膚疾患、化膿症、伝染性皮膚炎、皮膚潰瘍 |
■用法用量
通常1日1〜3回、適量を患部に直接またはガーゼに塗布して用いてください。 |
■有効成分
コリスチン硫酸塩(硫酸コリマイシン)、バシトラシン |
オノフェF
特徴 |
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膿んで腫れた痛いおできに |
殺菌作用をもつスルファジアジンと、患部の炎症をしずめる酸化亜鉛、組織の修復を促すアラントインを配合しています。
しみにくい軟膏タイプのため、お子様にも使用しやすい商品です。
ノンステロイドのため、股や太ももなどのデリケートゾーンにも使用できます。
■効能効果
化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日数回、適量を患部に塗布するか、またはガーゼ等に延ばして貼ってください。 |
■有効成分
スルファジアジン、酸化亜鉛、アラントイン |
テラマイシン軟膏a
特徴 |
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しみて痛いおできに 2種類の抗生物質のみ配合 |
抗生物質オキシテトラサイクリン塩酸塩とポリミキシンB硫酸塩を配合した薬です。
2種類の抗生物質が、それぞれ異なる菌に効果を発揮することで、すでに化膿してしまったおできを改善します。
皮膚を保護する力が高い軟膏タイプのため、患部が破けて触るとしみるおできに適しています。
ノンステロイドのため、股や太ももなどのデリケートゾーンにも使用できます。
■効能効果
化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日1〜数回、適量を患部に塗布するかガーゼなどにのばして貼付してください。 |
■有効成分
オキシテトラサイクリン塩酸塩、ポリミキシンB硫酸塩 |
おでき(毛嚢炎や面疔など)に使える市販薬|ステロイド配合
フルコートf
特徴 |
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ステロイド成分+抗生物質配合 ステロイドの強さ|ストロング(強い) 赤く腫れて痛むおできに |
ステロイド成分フルオシノロンアセトニドと、細菌の発育や増殖をおさえるフラジオマイシン硫酸塩が配合された薬です。
ステロイドの強さは、市販薬でもっとも強いストロングのため、赤みや腫れが強くでているときに適しています。
■効能効果
◯化膿を伴う次の諸症:湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ、しもやけ、虫さされ、じんましん ◯化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日1〜数回、適量を患部に塗布してください。 |
■有効成分
フルオシノロンアセトニド、フラジオマイシン硫酸塩 |
ベトネベートN軟膏AS
特徴 |
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ステロイド成分+抗生物質配合 ステロイドの強さ|ストロング(強い) 赤く腫れて痛むおできに |
ステロイド成分ベタメタゾン吉草酸エステルと、細菌の発育や増殖をおさえるフラジオマイシン硫酸塩が配合された薬です。
ステロイドの強さは、市販薬でもっとも強いストロングのため、炎症が強くでているときに適しています。
■効能効果
◯化膿を伴う次の諸症:湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ、しもやけ、虫さされ、じんましん ◯化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日1〜数回、適量を患部に塗布してください。 |
■有効成分
ベタメタゾン吉草酸エステル、フラジオマイシン硫酸塩 |
ドルマイコーチ軟膏
特徴 |
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ステロイド成分+2種類の抗生物質配合 ステロイドの強さ|ウィーク(弱い) 赤く腫れて痛むおできに |
ステロイド成分ヒドロコルチゾン酢酸エステルと2種類の抗生物質バシトラシンとフラジオマイシンを配合した薬です。
ステロイド成分ヒドロコルチゾン酢酸エステルの強さは、ステロイドランクのなかで最も弱いウィークです。赤み・腫れなどの炎症をともなうおできに適しています。
■効能効果
◯化膿を伴う次の諸症:湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ、しもやけ、虫さされ、じんましん ◯化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日1〜数回、適量を患部に塗布してください。 |
■有効成分
バシトラシン、フラジオマイシン硫酸塩、ヒドロコルチゾン酢酸エステル |
テラ・コートリル軟膏a
特徴 |
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ステロイド成分+抗生物質配合 ステロイドの強さ|ウィーク(弱い) 赤く腫れて痛むおできに |
ステロイド成分ヒドロコルチゾンと抗生物質オキシテトラサイクリン塩酸塩を配合した薬です。
ステロイド成分ヒドロコルチゾンの強さは、ステロイドランクのなかで最も弱いウィークです。赤み・腫れなどの炎症をともなうおできに適しています。
■効能効果
◯化膿を伴う次の諸症:湿疹、皮膚炎、あせも、かぶれ、しもやけ、虫さされ、じんましん ◯化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎) |
■用法用量
1日1〜数回、適量を患部に塗布するかガーゼなどにのばして貼付してください。 |
■有効成分
オキシテトラサイクリン塩酸塩、ヒドロコルチゾン |
病院に行く目安
おできに市販薬を5〜6日使用しても改善しない場合は、薬の使用をやめて、一度病院(皮膚科)を受診することをおすすめします。
もし、おできが陰部にできている場合は、おできではなく尖圭コンジローマなど別の病気のおそれがあるため、市販薬を使用せず病院(男性:泌尿器科、女性:産婦人科)を受診することを優先してください。
また、できものがおできではなく粉瘤の場合は市販薬で対応することができないため、おできか粉瘤か見分けがつかない場合も一度病院(皮膚科)を受診してください。